「心理的安全性」が低い組織で発生している潜在的な問題
前回のコラムでは、新型コロナ感染症流行の環境変化によって、若年層の社員から中堅層、管理職まで幅広く「コロナうつ」を発症する人が増えており、その対策として「心理的安全性」を高めることが有用であることをお伝えしました。
今回のコラムでは「心理的安全性」が低い組織をテーマにしたいと思います。それでは、「心理的安全性」が低い組織はどんな特徴があるのでしょうか。
経営者や人事関係者からは、「職場に活気がなく、会議では発言量が少ない」「上司の顔色を伺い、上司の発言には『それいいですね』しか言わない」「目標を低く設定し、挑戦をしない」と言うことをよくお聞きします。「心理的安全性」の提唱者であるハーバード大学ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授によれば、「心理的安全性」を低下させる原因は次の4つだと言います。
一つ目は無知だと思われる不安です。「そんなことも知らないの?」と言われるのを恐れ、尋ねることをためらってしまう。二つ目は、無能だと思われる不安です。「こんなことを言ったら、仕事ができないやつだと思われるのでは?」と思い発言をためらってしまう。三つ目は、ネガティブだと思われる不安です。上司のアイデアにリスクがあることに気づいたが、「ネガティブなやつだと思われるのでは?」と思い指摘をためらってしまう。四つ目は、邪魔をする人だと思われる不安です。「忙しいのに、そんなことで相談をするなと言われるのではないか?」と考えてしまい相談ができない。
さらにもっと問題なのは、「心理的安全性」の低い職場では、生産性の著しい低下に繋がる「もう一つの仕事」が蔓延していることです。みなさんは「もう一つの仕事」ってご存知ですか?「もう一つの仕事」とは、自分の弱さや仕事のミスを隠すことです。組織でこれほどの無駄を生んでいる要素は他にないと言います。ミスを犯した時に上司に怒られるのが嫌で、隠ぺい工作に時間を費やしてしまう。恐ろしいことに、このような状態の時は、隠ぺい工作がTo Doリストのトップに位置されるんです、本来業務ほったらかしで。。。
「もう一つの仕事」については、私も苦い思い出があります。私の会社員時代は、外資系の製薬メーカーで営業の責任者をしていたのですが、上司がシンガポールから来る度に、膨大な資料を一週間かけて作っていました。重箱の隅をつつかれ、その度に英語でまくしたてられるのが嫌で、胃の痛くなる思いをしながら言い訳のための資料を作っていたんです。私の本来の業務は、部下の育成や顧客と会うことでしたから、それらをほったらかして、言い訳のための資料を一週間もかけて作っているわけですから本当に無駄でした。
さらに凄いのは、私の部下も上司も同様なことを言っていたことです。私の部下は私に叱責されるのが嫌で言い訳のための資料を作り、上司も(上司の)上司に言い訳をするための資料を膨大な時間をかけて作る、組織全体では恐ろしい無駄です。
皆さんの組織ではこんな恐ろしい無駄は起きていませんか?「心理的安全性」が低いことによる無駄で悩んでおられましたら、弊社にお気軽にお問い合わせください。
講師紹介
佐川 欣也(さがわ よしなり)
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