職場のメンタルヘルス不調者や離職者の増加に悩んだら、心理的安全性を高めるのが効果的
最近、多くの企業の経営者や人事関係者から「心理的安全性」を高める方法についてお問い合わせをいただく機会が多くなっています。
問い合わせが増えている背景としては、新型コロナ感染症流行の環境変化による「コロナうつ」と呼ばれるメンタルヘルス不調者が増加して、企業経営に深刻な影響を与えていることが挙げられます。
新型コロナウイルス流行初期では、独身男性など若年層の社員に「コロナうつ」が多かったようですが、最近では中堅層や管理職で発症する人も増加しているようです。
流行初期に独身男性など若年層の社員に「コロナうつ」が多かったのは、テレワークによるコミュニケーション不足が原因とされています。テレワークにより仕事の課題や悩みを相談しにくくなったこと、「上司から自分は『さぼっているのでは?』と思われている」と考えてしまい漠然と不安になってしまうこと、オンラインの会議では発言がしにくく上司から積極性がないと怒られ会議や上司が苦手になったなど様々な理由があります。
一方、コロナ禍のように予測不可能で対処が難しい問題が頻発する時代は、中堅層や管理職は大変です
今までの経験や知識が通じないことが頻繁に起きるわけですから心労が絶えず、さらに立場上、上位者に相談をしにくいという心理が働き一人で抱え込んでしまい「コロナうつ」を発症してしまうわけです。
このような状態なので多くの企業は、ストレスチェックを始めとした様々な「ストレスマネジメント」に力を入れていますが、思うような効果を上げることができていないようです。
そこで、最近特に注目されているのが「心理的安全性(psychological safety)」です。「心理的安全性」とは、職場の中で対人関係のリスクをとっても、恐れや不安を感じることなく大丈夫だ、という心理状態です。 「心理的安全性」が高い職場では、仕事の課題や悩みを臆することなく相談ができ、テレワークで「上司から『さぼっているのでは?』と思われている」と余計なことを考えないで済み、オンラインの会議では、気兼ねなく発言できます。
「同様に、中堅層や管理職のポジションにあっても、自身では解決できない難しい問題(適応課題)を上位者やチームと気軽に話し合うことができるようになります。
ちなみに、「適応課題」とは、これまでの経験や知識では解決できない経験則が通じない課題のことを言いますが、その解決のためには、自分自身のものの見方を変えることが必要とされています。中堅層や管理職は、自身で解決できない「適応課題」を抱え込んで悩むのではなく、自分自身のものの見方を変えるために、上位者やチームと対話を行って解決策を考え出すことが必須です。「こんなことを相談したら管理職失格の烙印を押されるのではないか?」「こんなことを相談したら上司として無能と思われるのではないか?」という囚われや恐れからの解放にも「心理的安全性」を高めることは非常に重要です。 「ストレスマネジメント」は、今あるストレスに対処して管理を行いますが、「心理的安全性」は過度なストレスを発生させない健全な組織の土台作りになります。
次回のコラムでは、「心理的安全性」の低い組織で発生している潜在的な問題について、お話しをさせて頂く予定です。職場のメンタルヘルス不調者や離職者の増加に悩んでおられましたら、お気軽にお問い合わせください。
講師紹介
佐川 欣也(さがわ よしなり)
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